おしゃれ工房You友 大友 眞吾です。
今回は「セーターが縮んじゃったから伸ばして!」「セーター伸びちゃったから縮めて!!」
そんなご相談。
幅出し修正、いせ込み修正は、シミと同じで状態も素材もそれぞれ違うんです。
参考価格は書いたほうがいいか・・・
色の濃い紺色のジップカーディガンはウール素材。
幅出し修復3850円。
どれくらい縮んだかが本人もよくわからない状態・・・
これ、よくあるんです。
間違いなく縮んでるけど、縮む前をきっちりと覚えていないし、ニットだからかなり伸縮しますよね。
で、手で引っ張ってこれくらいだったかなぁ・・・とか(汗)
ほとんどの服は縮むことはあっても伸びるってほとんど無いんです。伸びるとしたら一般的にはアクリルニット。
画像は次ページになりますが、こちらは伸びた状態を縮める「いせ込み修復」4400円
ウールとよく似た質感がありふんわり柔らかく保温性もある素材。
吸水性がほとんどない素材。
肌に直に着ていると汗で表面ペタ付き出てくるし、毛玉も出来る素材。
吸水性がないのに、水洗いして水分含むと自重によりハンガー干しすると長く伸びてしまう・・・
でも、今回は胴回りが横に大きく伸びてしまっているんですが・・・どうしてだろ・・・??(滝汗)
前回ゼニアジャケットの記事で水洗いの注意点、繊維の膨潤収縮など少しご説明したので、引き続き水洗いで出た不具合です。
実際、よくある事例だと思うので簡単に説明していきますね!
こちらはウールカーディガン幅出しです。
左側画像は、下が幅出し修正した袖で上が修正前。
見た通りですが、幅も出しながら袖丈も出して修正しています。
前回、水洗いすると水分を含み膨張って説明しました。
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ウールはお風呂に入った時、手がふやけるのと同じように膨張し柔らかくなります。手の皮もふやけてプヨプヨになりますよね。
ウールの表面はうろこ状になっていて、この部分が水を弾く「疎水性」の特徴を持っています。
その内側が柔らかい部分で吸水性があり、体から発汗する汗など水分を吸湿しているので、表面が疎水性、内側が親水性という独特の特徴を持っています。
水分を放出する、発熱をさせる機能など持っている素材。水分を放出することで気化熱、水分を保湿することで発熱し温かいと言った機能です。
冬場圧倒的な人気を誇るユニクロのヒートテック、皆さん愛用しているかと思いますが、この暖かくなる発熱効果もウールの特性に着目し開発されたと聞いています。
吸湿した繊維が動くことで摩擦熱が生じ発熱し暖かくなる・・・らしい・・・(笑)
難しい話はクリーニング屋にはわからないので置いといて・・・(汗)
ウール繊維が水分を含み膨張すると柔らかくなりながらうろこ状のスケールも緩み広がります。この状態のときに繊維を動かすと、重なり合っていたうろこが深くかなさりあうため、固くなりながら縮むんです。
疎水性のこのスケールは水洗いをするたびに傷み壊れていき、繰り返し水洗いしていくと疎水性がなくなり質感や風合いだけではなくウール独特の疎水性、親水性という機能が失われるため、温かいという機能も失われていきます。
ドライクリーニングではどちらも壊れていきませんので、水洗いとドライクリーニングは状態を見てバランスよく洗い分けていく事が服を長くキレイに着ていくための秘訣なんです。
ウールを水洗いした時、縮ませないコツは繊維を揉まないこと。
膨張して柔らかくなっている時に動かすから不具合が出るということです。
だから、膨張させないよ洗うためには水に浸かる時間も考えます。
短時間で洗えば膨張する前に洗い終えることが出来るけど、繊維に水が浸透しないと染み込んだ汚れまで除去できない・・・
って書いてはるけど、実際には頭で考えてるわけじゃなく体が勝手に動いているんですけどね。(笑)
スケールが深く絡み合い固くなった状態(フエルト化)になると幅出し修正など修復は不可能となります。
髪のコンディショナーに配合されているジメチコンなどにつけ置きすると直せると言った情報よく出てきますが直ることはないですね。
ソフトな手洗い程度で出てしまった縮みや着ている時でも起こる目詰まり等は修復できます。
こちらはアクリルニットです。
画像は仕上げしながら簡単に撮ってしまったのでわかりにくいですが、下のアイロン台の左右と見比べていただくとわかるかな。
胴回りで20センチ程度幅詰めしています。
織柄も詰まっているのがわかると思います。
昔からこの技術のことを「いせ込む」って言っていましたが、これもいせ込みなのかなぁ・・・?
アクリルはウールによく似た化学繊維で柔らかく保温性もある素材です。
繊維自体には吸水性はないので縮む事はほとんどなく水洗いしやすい素材です。
でも、吸水性がないのに水洗いすると重たくなるし、水を含んだ自重でハンガー干しすると伸びてしまいやすい素材です。
その理由は柔らかく保温性のあるこの特徴です。
繊維の間に細かな空気の気泡状の隙間というか穴があるのでふんわり柔らかい、その空気が体温で温まり温かい空気の層の状態が作り出されるため保温性があるんです。この空気の層は羽毛が温かいのと同じ原理です。
ウールカーディガンと同じ画像ですが、今度は左画像、下側が伸びてる画像で上の袖が縮めた画像です。
袖丈8センチくらいかな、いせ込んで縮めていきました。
伸びてしまうのは繊維が水分を吸収するのではなく、繊維の間位にある空気の穴に水が入り込むから、だと思います。
思うというのは・・・以前も、先程も調べてみたけど情報が出てこない(汗)
構造的に、これしか無いと思います。
アクリルもヒートテックの発熱効果に利用されている素材です。
マイクロアクリルという、アクリルよりもっと細かな構造を持ったものが使われています。
吸水性の優れたレーヨンとアクリルを使ったのがヒートテック・・・だそうです(笑)
いせ込みは大量のスチームを使い、擬似的に水で濡れたような状態を作り修復していく方法です。
スチームを大量に含ませよく蒸すことで膨張した状態を作り、縮んだものはバランスよく伸ばし、伸びたものは少しず詰めていきます。
縮む、伸びると言った不具合が出るときと同じ条件にすることで元の形状に戻すことが出来るようになるんです。
いせ込みのほうが難易度は高く時間もかかるかな。
クリーニングは洗う技術、しみ抜きは洗いでは落ちないシミを落としていく技術、もう一段階上のシミ抜きになるとシミ抜きと同時に落ちてしまう色を復元(色修正)する技術が必要。
仕上げはまた別の技術が必要となりますが、一番難しいのが仕上げなんです。
機械仕上げだけならパートさんでもできますのでこれは別。
どんなにシミ抜きがうまくても、縮み変形など型くずれした服を直すことまではできる店はとても少ないんです。
幅出し修正は繊維自体を伸ばしたり縮めたりする技術です。
着られる状態に仕上げていくためにはデザインを元通りに戻していく修復技術も必要です。
私は繊維の目を見ながら元の形状に直していく「地直し」をすることでわからないデザインでも直していきます。
この「地直し」もまた幅出し修正とは違うスキル。少し前にある講師と話した時、「地直し」って言葉自体、久しぶりに聞いた・・・って言っていました。
私としては必要な技術だと思うけど・・・時代とともにクリーニング店からは無くなっていてしまう技術のひとつなのかな・・・
アクリルセーターは縮む心配はないけど、洗った後に重たいって感じたら平干ししないと伸びてしまう可能性高いです。
毛玉ができやすいので必ず裏返しにしてネットに入れて。
バケツなどで手洗いする時は丸めて全体を持ち上げないと型くずれしやすいので注意。
アクリルニット洗う時の注意点です^^