今回の綿コート復元洗い参考価格 13200円
全体の黄ばみ、点在するシミと変色落とし
全体的な黄ばみやシミを落とす洗い方を総称して復元洗いとしています。
工程は服のデザインや素材、状態により変わるため基本お見積りとなります。
おしゃれ工房You友(ゆうゆう) 大友眞吾です。
薄いシミや見えないシミが時間とともに見えるようになるのは空気中の酸素に触れ酸化されるからです。
これを酸化発色と言い、「酸化=腐食」 です! と、
このブログで何度も説明させていただきました。
今回は、「酸化=腐食」 というわかりやすい事例がありましたのでご紹介です。
まずはこの画像、向かって左側の白い生地にストライプの裏地部分、茶色いシミがポツポツとあります。
この状態を覚えておいてください。
今回は全体の黄ばみや変色はそれほどひどくなかったのでこれも見にくいですが・・・
衿の折山付近は色が変わっています。
皮脂による黒ずみと汗による黄ばみが出ています。
肉眼でははっきり見えるけど画像だとあまり良く見えないのがこの色目かな・・・
そしてこの画像は背中部分。
茶色っぽいシミがあります。
どうしてこんな部分に付いたんだろ?
もしかしたら、錆びた金具部分が合ったところに寄りかかって付いたのか?
食べこぼしのシミではないのは確かかな。
この部分も覚えておいてくださいね。
こちらは後ろ側裾部分ですが、よくある汚れです。
擦れたような黒ずみがあります。
この汚れは洗うだけでは残ってしまうことが多い汚れです。
酸化変色(酸化発色)は酸化されることでシミが濃くなって目立つようになるわけですが、「酸化=腐食」ですから・・・
酸化が進むということは、繊維の傷みはどんどん進んでいるということ。
繊維の傷みが進むとどうなるかは・・・
続きから御覧くださいね^^
全体の黄ばみ落とし
この色目の服は画像ではホントわかりにくいけど・・・
とてもきれいな色合いに戻っています。
今回は全体的な黄ばみはそれほどひどくなかったんですが、このオフホワイトの色に黄ばみが出てくるとなんとなく薄汚れた感じに見えてしまいます。
ゆうゆうへご相談されるお客様の場合、このなんとなく薄汚れた感じ・・・というのが気になるし取りたいってご相談がおおいんです。
水洗いでもドライクリーニングでも、「洗う」という工程では落とす事ができないのが酸化による黄ばみとなります。
空気中に酸素があるため、無酸素状態で保管しない限り黄ばみを抑えることができないんです。
酸化による生地の傷み 裏地
酸化が進むと生地も腐食していきます。
腐食が進むと少し力を加えるだけで簡単に破れたりボロボロと砕けるようにして粉々になったりします。
乾いた状態では多少引っ張っても大丈夫な状態でも、水分を含ませるととたんに破れたりするのも腐食が進んでいるからです。
この説明をすると、お客様は初めて聞いたって方がほとんど。
なぜ説明されないかって、腐食まで進んでいるような事例を取り扱う機会がほとんどないし、そこまでのシミ抜きを受けることもないから、ここで説明しているようなことが起こらないんです。
リスクを背負ってまではやらないんです。
でも、当店で出る不具合があるとしたら、どのお店でやっても確実に起こる状態になっているということなんです。
破損箇所のアップ画像です。
beforeはよく見えないかもしれないけど、穴が空いている箇所は濃いシミになっていた部分です。
濃くなっていた部分だけ糸が消えるようになくなっています。
100年以上経っている古い和服などをしみ抜きすると、しみ抜きした部分の糸が溶けるようになくなったりすることがあります。
濃いシミの周りも変色していたのですが穴が空いたのは濃かった部分だけです。
酸化物の付着量が多かった部分のみ酸化腐食が進んでいたんだなってことがよく分かる事例です。
シミが薄かった部分は腐食が進んでいるにしても、綺麗にする洗いに耐えられる状態程度だったって事ですね。
ある程度年月が経った服の場合、綺麗にできるかどうかは、繊維の状態に依存します。
裏地の場合だとキュプラは性抜け(酸化腐食)するのがポリエステルと比べると早くなります。
衿の黒ずみと黄ばみ
衿は皮脂と汗の両方が付着します。
皮脂は油汚れ(油脂系の汚れ)のため、目に見えていない空気中に浮遊しているチリやホコリが貼り付きます。
油ってベタベタするので接着剤のようになり貼り付くんです。
だから、袖、衿の黒ずみは皮脂に貼り付いた汚れ。
油脂系の汚れはドライクリーニングでも洗うだけでは落ちきらないため、シミ抜きをする必要があります。
皮脂は油性系、黄ばみを作る汗は水溶性、黄ばみは酸化分解しないと落とせないため、この工程を確実にやってもらうためには受付時にオーダーする必要があります。
しまう前にこの工程をちゃんとしておけば5年、10年と愛用しても衿が黒ずんだり黄ばんだりすることはないんです。
黒ずみや黄ばみが出てきたとしたら残念ながらしみ抜きという工程をされていないという事になります。
酸化による生地の傷み 背中
beforeでは濃い茶色いシミがあった部分です。
シミは取れているので目立たなくなっていますが、よく見ると糸切れが起きています。
先ほどの裏地同様、シミがあった部分のみ腐食が進んでいたため糸切れが起きた状態です。、
裏地と違い表生地は丈夫な綿100%。
生地も薄くなくしっかりした生地ですがそれでもシミ部分の酸化により糸が切れ穴が開いた状態になっています。
こちらはアップ画像。
右画像は穴を糸で紡いで補修した状態です。
着ていると後ろから見える部分なので一番細い糸を使い補修していきました。
アップで見るとわかりますが着ていればわからない程度には補修できています。
裏地の穴同様、シミが付いていた部分のみ、糸が切れ穴が開いた状態です。
穴の周りの糸はまだしっかりした状態です。
シミと繊維の傷み まとめ
上画像は後ろの黒ずんだ汚れ部分ですが綺麗に汚れは落ちています。
繊維も大丈夫だし、色抜けも起きていません。
シミや汚れの種類、保管方法などにより酸化する速度は変わってきます。
全体的な黄ばみは、汚れが落ち切っていない状態で乾燥機にかけると一気に黄ばみが出ます。
落ち切らない汚れで酸化速度が上がり、熱をかけることで一気に酸化速度が上がるため一度でいきなり黄ばんだりします。
乾燥機を使っている家庭の子供の体操服によく起きる事例です。
体の健康って悪い箇所はとにかく早期発見、早期治療することが大切ですね。
悪化させてしまってからでは取り返しがつかないことになったり・・・
服も同じように、シミが付いたらすぐに取ることで簡単に、綺麗に取ることができます。
放置したり悪化してからシミを取ろうと思うとしみ抜きも強くなり繊維の負担をかけ・・・繊維自体の傷みも進んでいるとシミ抜きができなくなったりもします。
シミが取り切れなくても落とせる汚れ(酸化物)をできる限り除去することで酸化を抑えることができます。
今回は 「酸化=腐食」 の説明でした^^