【洗い指定以外の工程に伴う保証について】

復元洗い等、洗い指定以外の工程を含む処理についてはクリーニングの保証対象外となります。
生地が耐え切れず溶けてしまったり、直せないほど変形してしまう等、
想定外の不具合が出てしまった場合は代金は頂かずご返品にはさせて頂いていますが、
弁償等の保証は一切できません。 それぞれ詳しく説明させて頂きますのでご了承願います。

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皮革クリーニング・染め直し・リメイク~ペンキを塗ったような質感になる理由は?~

皮革クリーニング・染め直し・リメイク~ペンキを塗ったような質感になる理由は?~

おしゃれ工房You友(ゆうゆう) 大友眞吾です。

ブログの更新がなかなか出来ず・・・久しぶりの更新です(汗)
最近は、当店の仕事を紹介していこうって気持ちがあまり強くなくなってきています。

どのお店も、HPを見る限り綺麗な仕上がりですね。
お客様はどのお店へ依頼したらよいか、わからないと思うんです。

そして当店のように小さな個人店は、宣伝広告にお金をかけられないから・・・
検索してもなかなか出てこないはず(涙)

そんなこんなで、ブログを更新しよう!って思うのはお客様から同じようなご相談が続いた時です。
今回も、検索してもなかなか出てこないような当店へ同じ内容のご相談が5~6件続いたって事は・・・
かなり増えてきているんだって実感したからです。

それは、皮革の染め直し、染め変えで、質感が消失した、風合いが固くなった、ペンキを塗ったような感じに・・・
続けてご相談があったのは、ペンキを塗ったような感じになって帰ってきた、という事です。

残念ながら、他のお店で染められたり、一旦手を入れられたものの修復は今現在お受けしていないんです。
以前はやっていたことでも、今はお受けできないって事も出ています。

トップ画像は黒ずんできたお財布の染め直しのご相談でしたが、この色だと汚れるから黒にしたい、と言うことになり、染め変えたものですが、質感はどうでしょう?表面の汚れ、トップコートや塗料を落とした後、質感を残し、色落ちも抑えるように染料、顔料での2度染め、トップコート仕上げをしています。

お財布一つでもここまで手をかけて行くとかなりの手間がかかります。
染め変え手順や手間などは→イヴ・サンローランバック染め変え
をご覧ください^^


皮革クリーニング・染め直し・リメイク~ペンキを塗ったような質感になる理由は?~さて、左画像は当店へ依頼する前に専門店へ依頼されたとのこと。依頼する前にお客さまご自身が画像を撮ってあったんですね。この画像をメールに付けてご相談いただいたものです。

他のお店で染色されたモノのやり直しをお受けしたのはこのクロエバックが最後だったと思います。

塗料を剥がす場合、剥がすための溶剤を使うわけですが、こうした違う素材、部分的な修復はお客様が思っている何十倍も大変な仕事になってしまうんです。

このバックはエナメル皮革に染料染めされた革が付けられているので、エナメルに剥がす溶剤がつかないように作業していくのがものすごく大変・・・


皮革クリーニング・染め直し・リメイク~ペンキを塗ったような質感になる理由は?~皮革クリーニング・染め直し・リメイク~ペンキを塗ったような質感になる理由は?~皮革クリーニング・染め直し・リメイク~ペンキを塗ったような質感になる理由は?~
クロエバック修復事例は→クロエバック修復

左から当店到着時、色を剥がした状態、仕上がりです。
仕上がりはお客様が感想メールを下さりご紹介していますので、生の声もご覧ください^^

到着した時点で所々色が剥がれていて、真ん中画像の色が出ていました。
皮革が染料染めなのは、真ん中画像を見ればわかります。顔料を剥がす工程では染料は落ちないんです。

染料染めに顔料を入れる・・・風合いを残しつつ、染料染めと似たような色、風合いを出してい行くのはとても難しく、簡単にやってはいけないのですがとても多くなってきた事例です。

風合いもペンキを塗ったような状態、さらに一度の使用で塗料が剥がれてしまった靴の事例は下記をクリック。

クロケット&ジョーンズ風合い修復

ということで、この先は簡単ですが、塗料の違い、染料と顔料の違い、ペンキを塗ったような感じにどうしてなるんだろ?ってことの説明を画像とともにさせていただきますね^^お客様より同業者様の参考となってしまうかな・・・(汗)




皮革クリーニング・染め直し・リメイク~ペンキを塗ったような質感になる理由は?~

以前、これから革を扱う同業者のために、「革の本」という教科書と言われる本2冊に執筆者の一人として参加し、当店の技術提供をしました。私は誰からも教わっていないため、すべて独学です。

その時の画像を数点、乗せながらのご説明です。同業者の方で参考になったって方がいらっしゃれば、
「全ドラ」で「革クリーニング 入門バイブル」 「革リメイク活用バイブル」 として販売しています。

顔料というのは小さな色のついた石を接着剤で貼り付けるようにして色づけるものです。
なので、中には貼り付けるための接着剤(樹脂)が入り塗るだけで色が付く「塗料」になります。

ピグメントとは、水に溶けない不溶性着色料の事で、お化粧に使われていたことから「顔料」と呼ばれています。
なので顔料で直していくものは化粧直しをする、とか、塗装するって言われたりしますね。

画像はその貼り付けるための樹脂を固めたものですが、左側はゴムのように伸び、右側はブチッと切れています。
このように、伸びるもの、切れるもの、柔らかいもの、固いものがあり、革素材に合わせて私は作っています。

多くのお店は革用塗料として仕入れたものを使っています。チェーン店では研修を受け独立したお店以外は塗料を販売しませんが、1種類の塗料ですべての革に対応できるのか?って言うところが疑問・・・と言うか私は無理だと思います。

薄い皮もあれば柔らかい革もあり、伸縮する革もあればしない革もありますね。
使った後の修復になりますから、傷ついていたり、革の目が潰れていたり切れて無くなっている部分もあったりします。

革の質、表面変化の修復など、工程が一つ増える事に手間が何倍もかかってしまうことも。
一つの塗料を使い、一律の金額でやっていけるのかどうかは・・・ご自身で判断してください。

ロエベ(LOEWE)得意の、とても薄くて柔らかく、伸縮するナッパ皮革がありますが、左側の伸縮する樹脂と風合いを柔らかくする樹脂の組み合わせで直した事例は→ロエベナッパ素材バック染め直し

このロエベバックを最初に相談した業者はこの素材は固くなる、色は黒にしか出来ない、と言われたとのことでしたが、そんなご説明が出来るってことはそれなりに勉強もし自分の技量もわかっている、技術のあるお店だと私は思います。

皮革クリーニング・染め直し・リメイク~ペンキを塗ったような質感になる理由は?~


それでは、顔料と染料の違いです。
画像を見た通り。上側は白い紙に同じ色を作りエアーブラシでひと吹きしたモノ、下側は吹きつけた染、顔料です。

白い紙に吹きつけてみると同じ色だけど、色がぜんぜん違いますね。
中に入れてあるのは10円玉。左側は少しずらさないと入れたのすらわからない、右側は透けて見えています。

顔料は透明感がない、染料は透明感があるとこのブログで何度も書いてきていますが、見れば一目瞭然ですね。
汚れやシミがあった場合、顔料は透明感がないので隠していくことができますが、染料は透明感があるため隠れないんです。

なので、多くの業者は顔料を使うんですね。顔料が悪いってことではないんです。
染める対象物の色、質感を見て、どの程度の変化が出るかなど事前説明ができるかどうか、がそのお店の技量と見て間違いないと思います。

あとは顔料と染料をよく理解し、色落ちしないように、色の退色を抑えるように、そして見た目が違う染料と顔料を同じ色になるように調色できるかどうか・・・HPなどではわからないスキル部分だから判断は難しいです。


皮革クリーニング・染め直し・リメイク~ペンキを塗ったような質感になる理由は?~

さて、それではどんな変化をしていくのか・・・画像はクリックで拡大します。
左画像は何もされていない革、右に行くに従って塗料(顔料)を濃く入れています。

革のシボ(シワ・型押し)が少しずつ埋まりながら色目、質感、光沢も変化していくのがわかります。
一番右画像を見ると、凹凸が埋まっているのがわかりますね。さらに、ペンキを塗ったような、になっていませんか?

例えばしみがあったとしても、この凹凸が埋まるくらいの塗料を重ねれば隠すことが出来ますね。
でも・・・隠すことが出来たとしても、ご覧のとおり・・・

シミや汚れは消えてるけど・・・とお客様からよくお聞きしますが、理由は見たとおりです。

この顔料染めと言うのは、革の上に塗料を乗せています。マニキュアと同じ理屈です。
薄く入れれば質感も残せますがシミ等が隠れないので、見えなくなるまで重ねて塗料を入れて行ったらペンキを塗ったような質感になってしまった・・・となってしまうわけです。

当店の場合、染め変えが黒になることが多い理由は、シミや汚れが酷いものを革らしい質感を出来る限り残して消していくのは、黒が一番仕上がりともに良くなるからです。色自体はどんな色でも作ることが出来ますから・・・

皮革クリーニング・染め直し・リメイク~ペンキを塗ったような質感になる理由は?~

このバックはバーバリー、同業者さんからのクレーム修復依頼品です。
洗ったら色落ちしてしまい、直して欲しいとのこと。色入れまではできる業者様です。

新品時、顔料なのか、染料なのか、もしくは染料、顔料両方使われているものなのか・・・
私も見た目だけでは正確な判断はできません。

画像は修復した後ですが、右側拡大画像をよく見ると浅い傷のようなシボ(シワ)が見えます。

洗う前の状態とか新品時の状態を私は見ていませんからこれが洗ってなったものなのかもわかりません。
だから元通りに戻して欲しいと言われても難しいです。

色を入れる、と一言で言っても対象物の状態に合わせて下地を作ったり、入れたり、シミがあれば部分的にシミ抜きをしてからなど方法は様々。このバックも質感を残して色を入れることもできれば、凹凸を消しながら色を入れることもできます。

このバックは質感を残しながら染めていきましたので、お預かり時の質感のまま染色できていますね。

染料、顔料、仕上げ剤にも水性、油性とあり、それぞれ特徴というか役割が違います。
染料も色あせしやすいもの、しにくいものもあり、色褪せを抑えるための方法もあります。

顔料は小さな色の粒子ですが、粒子の大きさにより仕上がりも変わりますし、同じように色褪せなど出方も違います。

例えば幼稚園のお絵かきなどに使われるポスターカラーなどで書いた絵を壁に貼り付けておくとすぐに色褪せていきますね。
同じ絵でも画家が作品を何十年、何百年と残すために使う絵の具は簡単に色褪せたりしません。

今回の記事は先にご紹介した革の本を作る際、私が技術提供した中でも、
最も気をつけてやらなければいけないって思い提供した内容の一部です。

そして今、皮革を手掛ける業者が増えるのに比例して、危惧していた事が増えています。

本来、皮革製品を作る側の業界では製品化されたものを洗って綺麗にするって概念はなかったんです。
色も同じく、私が皮革を作る側のセミナーに参加した5年位前には染色して直すという事を始めているお店があるということに驚いていたくらいです。

私には業界を変えるとか、そんな事はできませので・・・
このブログを読んで下さっている方に向けて、これからも情報を出させて頂こうと思っています^^








 
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