

「おばあちゃんが手縫いで刺繍した日傘を結婚式で使いたい・・・

」
こんなご相談がありました。
どれくらい前の傘かわからず、シミも変色もいつ頃から出ていたのかもわからない傘。
しかも結婚式まで日にちがなくお送り頂いてから2日でお送りしなければ間に合わないと言うご相談でした。
おばあちゃんはもう亡くなられていて刺繍糸も何を使ったかお聞きする事も出来ず、芯には木が使われていて
復元洗いをすると刺繍や木の色が抜けたり、もしかすると生地も性がなくなっている可能性もあります。
性抜けが起きていると洗うととたんに破れたりします。こうなると繊維自体に寿命が来ていたってことになります。
式までに日にちもないため破損箇所が出てしまっても修復している時間もありません。
洗い直す時間もないため一度の洗いとシミ抜きで綺麗にしなければいけない・・・
断るべきなのか何とかやってみるべきなのか・・・迷ったご相談でした。
でも、「おばあちゃんが刺繍した日傘を使いたい」って・・・とても素敵な事ですね。
もしできなくてもこのまま使いたいと。
できることなら綺麗にして結婚式で使って頂きたい・・・
とりあえず現物を見てみないとわからないため、すぐにお送りして頂き、
できなければすぐにお送りさせて頂きます、と言う事でお預かりをしました。
やはり古いだけあって白い色もくすみ焼けと不明のシミがあっちこっちに出ていました。
でも・・・お送りして頂いてよかった^^
とても綺麗にすることができましたヽ(^◇^*)/



刺繍糸、生地はおそらく大丈夫と判断したのですが
問題は芯に使われている木の部分。
かなり古いため茶色く加工されている木部分は
漬け込んだ部分のみ加工が剥がれてしまうと
思います。
新しいうちは大丈夫なのですが少し古くなると
日傘の木の部分の加工は復元洗いすると
剥がれてしまうんです。
日傘の復元洗いをお受けする際、木の芯が使われている場合必ずはがれてしまう可能性をお伝えさせてもらっています。
剥がれてしまった場合(画像左)はこんな感じで漬け込んだ部分まで剥がれてしまいます。
剥がれてしまった場合、残っている部分の加工を剥がして色を揃えていきます。
芯には樫の木が使われているためとても丈夫で加工を剥がしても大丈夫だと思いますが色は白くなってしまいます。
表面加工は樹脂でコーティング(ニス塗りもコーティング)なのである程度年月が経っていると劣化により剥がれてきます。
手間のかかるご依頼がとても多い事、手間がかかる分金額も高くなってしまう事などもあり・・・
剥がれた加工の再加工まではやっておりません。
芯に木が使われている傘は白くなるかもしれないと言う事をご了解、リスクのかかる復元洗いは保証対象外ということをご了解頂けた場合のみお受けさせていただいております。


そして洗い上がりです^^
折り目部分の線状の変色はお受けするほとんどの日傘に出ています。
日傘クリーニングに依頼したけど出す前と変わらないと言うご相談もお受けしていますが、
この変色、焼けは洗うだけでは取れないんです。
本来クリーニング業の仕事は変化を出す事無く洗い綺麗にする事です。
日傘の芯が木の場合、何もお伝えせず洗って色が剥がれてしまったら事故品となってしまいます。
着用時に多少汚れた程度の服ならどのお店でも問題なく綺麗にできると思いますが、
当店へご相談される多くの物は通常クリーニング店ではできないとされる状態のものがとても多いんです。
中にはお客様とご相談しながら色を変え、形を変え使えるようにリメイクしていく物もあります。
今回、木部分は白っぽくなってしまいましたが生地部分は変色も取れ新品時の色合いが蘇り、
無数にあったシミもほぼ取り切る事ができています。^^
赤は色褪せしやすい色。特に綿は色落ちしやすく褪せやすいんです。
時間の経過とともに酸化も進み、洗うと同時に繊維から離れている色は洗い流れてしまいます。
赤い色は少し薄くなりましたが、予想以上に赤みを残す事ができたなって思っています。
色止め加工をした後、洗い落ちる色が滲まないよう、色移り防止剤など使いながら、洗い方も色にじみが出ないようずっとつきっきりで洗っていきました。
思いをお聞きしているから・・・この日傘から一瞬たりとも目を離すことができませんでした。
「おばあちゃんの刺繍した傘を結婚式に使いたい・・・

」
こうしたお手伝いができるこの仕事、誇りに思っています!