おしゃれ工房you友(ゆうゆう) 大友眞吾です。
ポリウレタンなど経時劣化を続けてご紹介しましたので、もう一つ目に見えない部分の経時劣化もご紹介しておきます。
この事例は洗ったら出てきた染み出しとして過去にご紹介しているモンクレールダウンコートですが、3つの記事をまとめておくように再度ご紹介させて頂きます。
モンクレールやヂュペチカなど、高額ブランド品の場合は洗わないほうが良いって話をよくお聞きします。
このダウンも画像のエリは真っ黒になっていて、お預かりする際に汗と皮脂汚れにより色がすでに抜けている可能性、画像のような油シミのようなシミが出てくる可能性をお伝えしてあります。
軽くて暖かいダウン製品を作るため、薄い表生地の裏側に冷たい外気を遮断するようもう一枚生地が貼り付けられています。
この生地を貼り付ける、もしくはコーティングして生地の目を塞ぐなど加工をする際、経時劣化で紹介しているポリウレタン樹脂が接着剤として使われます。
前の記事で説明していますが、セロテープやガムテープがしばらく貼り付けてある壁などから剥がすとべとべと糊残りします。
空気中の湿気(水分)で接着剤が溶け出した状態なのですが、服の内側で同じように溶け出し表生地が薄いと表側に染み出してしまうんです。
この樹脂は乾くと不溶性と言って水に溶けださなくなるのですが、長い時間水分に触れる事により少しずつ溶け出してしまうんです。これを加水分解と言います。
上画像は前、おなか当たりの部分かな。
洗う前にはなかったシミですが、油性系のシミ抜きをしても取れなかったので内側から染み出してきたシミ。
という事で、どうしてエリ部分の染み出しがひどく出てきたのか・・・
汚れが付着していても洗わないほうが服は長持ちするのか・・・?
アフター画像をご覧になりながら続きをどうぞ^^
薄い生地のダウン製品はほぼどの製品でも裏側にコーティングされているか生地をウレタン樹脂(接着剤)を使って貼り付けられています。
水分による加水分解してしまうのですが、それより早く分解が始まってしまうため、このモンクレールダウンコートも衿だけがひどく染み出しが出ており、その他の部分はまだ染み出しはほぼみられない状態。
衿の黒ずみは皮脂によるモノなのですが、この皮脂も油性系の汚れなんです。水に溶けださない不溶性のモノでも油により溶け出してしまうモノは多いんです。
例えばネイル。手を洗っても簡単に剥がれてこないけど除光液(アセトン)を使うと簡単に取れますよね。
皮脂という油汚れを付着したまま時間を置いてしまったため、皮脂が付着している部分(今回は衿)のみ貼り付けていた接着剤が溶け出してしまい、皮脂汚れを落とすと黒ずみに隠れていた染み出しがはっきりと見えるようになった状態です。
服は洗うと傷むからってよくお聞きしますが・・・
汚れを付着させておいていい事は何もないんです。
空気中の酸素によりどんなモノでも酸化(腐食)していきますが、汚れが付着していると酸化する速度が速くなります。
白なら全体的なくすみや黄ばみ、色柄モノなら色褪せなどが早く進んでしまうって事です。
衿や脇など黄ばんだりするのも汚れ(酸化物)がほかの部分より多く付着しているため、他の部分より早く酸化による変化が出て黄ばんだり色が抜けて変化してしまったりするんです。
いいお洋服を長く綺麗に愛用されている方は、汚れが目立つ前に洗って落としています。
何かしらの変化が出てしまってから直すのは容易ではないので、出ないよう予防していくのが長く綺麗に愛用するための秘訣です。健康管理と一緒ですね。
一人のお客様から同じ服が何年も渡ってお手入れを任せられるのがクリーニング店。
そのお洋服がエリが真っ黒になったり脇が黄ばんで変色が出たりしたら手入れさせてもらっている自分の責任だから、っと考えて仕事をしているお店が見つかれば、服は本当に長く綺麗に愛用できるようになります。
ただし、メーカーが時間とともに寿命(経時劣化)が来てしまう素材や材料を使っていたら長年愛用は難しくなります。
今回は先にご説明させて頂いた事が見事に起きてしまった事例ですが、改善できるものは取っていきます。
何の説明もなくこの状態でお返ししたら今回は特にモンクレールという高額品ですし、中には一生モノだからと勧められて購入されているお客様もいらっしゃいますので・・・即クレームになってしまいます。
どんな服でも酸素により酸化腐食は進むため新品の状態を維持することはできないし使えば傷みも出ます。
色が付けられている服は繊維からすると染料という名前の汚れを付けられているのと同じだから必ず褪せたり変化したりします。
ある程度は消耗品。寿命が来るまでできる限り綺麗に長く愛用して頂けるようにお手入れしていくのがクリーニング店の仕事です^^