※当店は「指定洗濯物取扱施設」として認可を得ています。
スーツ消臭殺菌、シミ抜き参考価格(2020年12月現在・税抜き)
※基本嘔吐物、汚物などが付着している物のクリーニングは基本お受けしておりません。
今回のシュープリームスーツ参考価格
ジャケット 15000円
パンツ 4000円
(殺菌、消臭、しみ抜き、型崩れ修正仕上げ)
今回はLINEで画像を送って頂き、服の状態、ご自分で処理された内容を見てから、お受けさせて頂いた事例のご紹介です。
いきなり嘔吐物が付着したものをお送り頂いた場合、開封せずそのままご返品させていただくことになりますのでご注意ください。
おしゃれ工房You友(ゆうゆう) 大友 眞吾です。
まず最初に、法律上、一般のクリーニング店では嘔吐物や汚物など付着したものをクリーニングできないんです。取り扱うには行政へ申請、認可が必要です。
今回、お受けしたのはLINEで服の状態とお客様が処理された内容がわかっていたからです。
Before画像はすべてLINEでお客様から送られてきた画像です。画像とともにご自身でされた処理も詳しく書かれていました。
必要な情報がとてもわかり易く、当店に限らず相談される場合はこんな感じで写真も撮って相談されるといいんじゃないかな。
ご説明の内容は・・・
「ブログの方を拝見させていただき、ラインを追加させて頂きました。
スーツの匂い取りについてです。嘔吐物の匂いが取れず、再び着れるようにしたいのですが自分自身ではどうしていいかわからなくなってしまい、ご相談させていただきました。
クリーニングするにあたり、自分自身でもお風呂場で水を貯め、ナイロンブラシと天然石鹸でできる限りの汚れは落としたのですが、やはりクリーニング店に受けてもらえないのも知っているのでどうしていいかわからなくなってしまい、基本的にお受けしていないのも、無理も承知でお願いしたく、ご連絡させて頂きました。
まだ普段着としては2.3回ほどしか着用しておらず、どうしてもまた着れるようにしたいので何卒ご検討頂ければと思います。
現物の状態に置きまして、画像の方をお送りします。
何卒よろしくお願いします。」
品質表示も撮って送って頂けたので必要な情報がひと目で分かります。
クリーニングにしてもシミ抜きにしても、何が付いたのか?ってことよりどんな素材についたのか??の方が重要なんですね。
それと全体どんな状態になっているのか。家庭で水洗いされた場合、縮み変形がひどく出ていると修復しきれないものってあります。
自分たちが水洗い不可とされている服を水洗いする場合、縮みや変形、色にじみなど予測し、修復することを前提に考えて洗うんです。
お客様が洗濯機でガラガラを洗ってはいないこと、状態を見てこの程度ならきれいに仕上げられるかなって予測できたこと。
嘔吐物がきれいに洗い流されている事を確認できたこと。
それと先程ご紹介した説明内容。
状態を丁寧に撮られていること、内容も丁寧に書かれていることから、大切な服、どうしてもなんとかしてほしいって気持ちも伝わってきます。
ただし、先にも書きましたが、嘔吐物が付いた服って一般クリーニング店では取り扱いが法律上できないんです。
クリーニング業法の第3条第3項第5号
『伝染性の疾病の病原体による汚染のおそれのあるものとして厚生労働省令で指定する洗濯物を取り扱う場合においては、その洗濯物は他の洗濯物と区分しておき、これを洗濯するときは、その前に消毒すること。ただし、洗濯が消毒の効果を有する方法によつてなされる場合においては、消毒しなくてもよい。』
とされています。なので医者で使っているシーツや寝間着、白衣など目に見えた汚れがないものも含まれます。
これらを
「指定洗濯物」と呼び、指定洗濯物を取扱う施設を
「指定洗濯物取扱施設」といい、行政へ申請して許可を得ることで法律的にも取り扱えるようになります。
何も言わず汚物の付着した洗濯物を他の被洗物で丸めて分からないように持ち込まれたりってあるんですが、これが原因で感染を広げたりしてしまうと加害者となってしまいます。
お店側も受付のパートさん、社員さんが感染したら大変だから、受けることはないんです。
一般のクリーニング店で申請して認可取っているお店ってほとんどないと思います。
確かに感染症が原因で嘔吐・・・となれば断ります。基本受けることはないですけど・・・
ただ、時折、いつもお世話になっているお客様から飲みすぎて嘔吐してしまったとか、知人の服に付けてしまったなどご相談があったりします。
そんな時、法的にも問題無く取り扱えるように行政へ申請して「指定洗濯物取扱施設」として認可を得ています。
お世話になっているお客様が困った時にできる限りのことをするために、を目的として申請して許可を得ています。
今年はコロナで始まりコロナで終わる・・・そんな1年になってしまっていますが、いろんな事が変わっていく中で当店も変わっています。
最近の記事はその準備として書いているんですが、手応えを感じているので今回もかなり手間かけて画像を撮りまくっています(笑)
今回はこんな感じでLINEでご相談頂けたらわかりやすいなぁってご紹介をさせて頂きながら・・・シュープリームスーツ、消臭殺菌、シミ抜きです!
画像に少し説明付けてご紹介です^^
まずは触る前に殺菌です。お客様にはお送り頂く際、ビニール袋に入れ内側に折り込んで密閉状態にして送って頂くようお願いしてあります。
殺菌剤を作ったら広げることも確認することもなく、静かにそっとそのまま丸ごと殺菌からです。
素材によってはこの工程で色が出たりなど不具合が起きて駄目になる可能性もありますが、それでは困るという場合は100%お断りとなります。
この殺菌剤はコロナでもノロでも、あらゆる菌やウィルスを不活性化できる殺菌剤を使い十分な濃度、時間を掛けています。
殺菌してから、洗いになります。
今回はお湯に洗剤、防縮剤、もう一度殺菌剤、抗菌剤を入れ押し洗い。
この段階でニオイを感じたからということで、次!
画像には撮ってなかったけど、Before画像で写っていた裏地のシミ。
油性系しみ抜き剤を付けブラシがけをしてから漬け込んでいます。
ただ水洗いするだけでは油性系の汚れは落ちないんです。
この工程は汚れというより消臭目的。
臭いに強い薬剤と洗剤で押し洗いしています。
今回もお客様ご自身が水洗いしても取れないと言っていたニオイ。
飲み食いしたものが胃の中で混ざり半分溶けた状態で繊維の奥にまで浸透しながら付いています。
水洗いすれば簡単に取れるものではなく、最悪なのは経験上、サバ・・・
魚の生臭さは中和することで取ることができるのですがサバ食べて嘔吐したものはほんと取れにくい・・・
飲み物の場合だとワインを飲んでいると水洗いだけでは取れないシミになります。
洗い上がると全体的に結構なシワが。
これは健也が洗って付けたシワではなく、お客様が洗った時にできたシワ。脱水時に付くシワですね。
家庭で洗う時のコツ・・・脱水時間を短く!です。
そして人体形成プレス機でおよその形を形成しながら乾燥です。
この形成プレス機はかなり高性能で、このプレス機ができたおかげでスーツの縮みがパートさんでも修復ができるようになりましたね。
人の体と同じように人体型をした機械に着せることで立体的な仕上がりにすることができます。
大量のスチームで蒸し形成していきますが、手仕上げする場合はこの後で一通りの手仕上げをしていくことになります。
今回は濡れた状態から乾かすことでシワの伸びもよく、当店で洗ったのであればシワはきれいに伸びてくれるのですが・・・
こちらは前側。濡れた状態で脱水を強くするとシワの折れ方も強くなり伸びなくなってしまうんです。
家庭洗いのコツで脱水を短く!って書いたのも、短くすることでシワもつきにくく、シワが付いたとしてもアイロンで簡単に伸ばすことができるからです。
背中も同じくシワは伸びきりませんでした。
スーツを家庭で洗うことはないと思うけど、こうなってしまうとスーツとしては使えなくなってしまいますね。
家庭でこのシワをアイロンできれいに仕上げるって、めっちゃ大変だしよほど慣れていないとできないと思います。
機械仕上げだけでは伸びきらないシワになるので、クリーニングに依頼してもかなりシワっぽさが残るんじゃないかな。
こちらはズボンを裏返してアイロンかけています。
この部分は横の縫い目裏側になりますが、縫ったあと生地を開いて仕上げられています。ズボンでもパンツでも裏を見てみるとわかります。(画像は撮ってない・・・)
水洗いすると開いてある生地が閉じたり歪んだりするため、裏返しにして開き整えてから仕上げていきます。
これも機械仕上げのみではできない作業ですね。
水洗い依頼した後、縫い目に部分に凹凸がある場合、開かれていないんです。
そして最終仕上がりです^^
こうしたストライプがある生地は歪みを直しやすいんです。
ストライプをまっすぐに揃えていくと生地の織りも揃っていくからです。
生地の織りを揃えて直していくことを「地直し」と言いますが、ストライプがないと織りを見ながら整えていくことになります。
衿はスーツの命。膨らみをもたせながら・・・仕上げに一番注意する部分ですね。
こちらは裏地ですが、レーヨンが使われています。
良いスーツのほとんどに使われるのがキュプラなのですが、このスーツはレーヨンが使われています。
キュプラが使われる理由は静電気を帯びないから、ですがレーヨンも植物性繊維だから起きないのかな・・・
キュプラにしてもレーヨンにしても水分を付着させるとそのままシミになったりします。
素材的にドライクリーニングしかされないのがほとんどで水溶性の汚れが蓄積していると水に濡れた形がそのままシミになるんです。
裏地にしても表生地にしてもレーヨン、キュプラにファブリーズなどまともに吹き付けるとそのままシミになるので吹き付けては駄目・・・
こちらも広範囲にしみがあったのですが、油性系のしみ抜き剤を付けブラッシングとしていったので、綺麗に取れています。
この部分は濡れてしまうとシミが見えなくなるので乾かないと取れたのかどうかの確認ができないんです。
取れていないと・・・もう一度洗い直す事になります。
レーヨンにしてもキュプラにしても裏地の仕上げってすごく大変になることが多いんです。
スーツの水洗いを宣伝しているお店のHPとか拝見させてもらったりしているけど、裏地に触れているの見たことがあまりないんです。
ポリエステルならいいけど・・・難易度と言うか手間のかかり方がかなり違うんですけどね・・・
背中部分も縫い目など跡が出ないよう仕上げています。真ん中に縫い目があるから跡が出てしまうとかなり目立ちます。
トルソーに着せることで型崩れの有無、デザインやバランスが分かります。
最近はトルソーに着せているお店も多くなってきましたが、個人店だとこうして着させて画像撮って載せたのは当店が最初じゃないかな。
ズボンは形がシンプルなので水洗い、形成仕上げは簡単です。
女性物で総裏地になっているパンツは厄介だけど(汗)
男性物のズボンは比較的簡単に水洗いができるしきれいに仕上げもできるから、水洗いで受けるお店は多いと思います。
特に夏物は太股部分の色が抜けたり変色したり出てきます。汗による色抜け、それとしゃがんだりした時に生地が引っ張られ伸びるため傷みも激しいからです。
しまう前に水洗いして汗を落としていくことで色落ちもかなり抑えることができます。
汗取りドライでは無理・・・汗は落ちきっていません。
上下揃えて洗わないと色が変わるってよく言われます。
綿、麻製品は白でも濃い色でも同時に洗うのが鉄則。色が変わりやすい。
ウールの場合だと白は色の差が出やすいけど、その他の色はそれほど変化出ません。
ただし、スーツのズボンということをお店に伝え、水洗いにするにしてもソフトに、汗のみを落とす感じで洗う事で上下の色の変化を最小限にすることができます。
上着は必ずシャツを着るから汗が直接付着する事も少なく、上着より先にズボンが駄目になりますから。
さて・・・画像がたくさんありすぎて疲れましたぁ・・・
でも、丁寧な仕事を望まれる方はこの長い記事をしっかり読んで頂けているようなので・・・
丁寧な説明と詳しい内容でまたご紹介させていただこうと思っています