【洗い指定以外の工程に伴う保証について】

復元洗い等、洗い指定以外の工程を含む処理についてはクリーニングの保証対象外となります。
生地が耐え切れず溶けてしまったり、直せないほど変形してしまう等、
想定外の不具合が出てしまった場合は代金は頂かずご返品にはさせて頂いていますが、
弁償等の保証は一切できません。 それぞれ詳しく説明させて頂きますのでご了承願います。

   平均使用年数表はこちら   保証割合表はこちら

マッキントッシュクリーニング~ボンディングの溶け出し事例と法律基準による金額算出方法~

マッキントッシュクリーニング~ボンディングの溶け出し事例と法律基準による金額算出方法~

今回ご紹介のマッキントッシュコートはご返品となっております。、
色んなタイミングから、同じような事例のご相談が増えてきており、表示も撮りましたので合わせてご説明です。

マッキントッシュボンディング
ゴム引きコートクリーニング参考価格(2020年10月現在・税抜き)

洗い指定通りのクリーニング     7000円~

固くなったゴム引き修復洗い     12000円~

お受けできるかどうかは状態確認後となります。

全体色修復           25000円~ 


マッキントッシュクリーニング~ボンディングの溶け出し事例と法律基準による金額算出方法~

おしゃれ工房You友(ゆうゆう) 大友 眞吾です。

タイミング的に増えてくるご相談になると思いますのでご紹介です。

タイミング的に、ということからご説明しないとわかりませんよね。

マッキントッシュと言えばゴム引きという素材を使って作られたコートが有名です。

綿生地にゴム樹脂を入れ込んで、通風性を遮断する、スコットランドのマッキントッシュ社が開発した素材で作ったコートですね。

昔使われていた樹脂と今使われている樹脂は材料自体が変わってきていますが、日本製のこのマッキントッシュはスコットランド製とはまた違うんじゃないかな。

ルイヴィトンのマッキントッシュコート、エルメスのマッキントッシュコートなど色んなブランドでも同じような素材で作られたコートのご依頼ありますが、各メーカーごとに素材が違うんです。扱った感覚と不具合の出方が違うんです。

マッキントッシュクリーニング~ボンディングの溶け出し事例と法律基準による金額算出方法~

画像は「樹脂の染み出し」「樹脂の溶けだし」という現象ですが、タイミングというのはこの状態になる時期が来た、ということなんです。

三陽商会がマッキントッシュの取り扱い始めたのはバーバリーとのライセンス契約が終了したためです。

1964年からバーバリーロンドンの輸入が始まり、インポートブランド品として販売されていたバーバリーコート。

1990年になると三陽商会からインポート製品の半値位になるブラックレーベル、ブルーレーベルを立ち上げ一気にバーバリーというブランドが広まったと記憶しています。

品質も日本製のほうがいい、と本家バーバリーも認めていたって話も聞いていましたし、実際日本製のバーバリーコートは30年、40年前のモノのご相談ってたくさんあるのですが驚くほど綺麗にできてしまう、そんな頑丈でしっかりとしたつくりになっています。

ブラックレーベル、ブルーレーベルからバーバリーという名前がなくなったのが2015年の終わり頃だったかな。

品質はほとんどそのままなのにバーバリーという名前が消えただけで全く売れなくなってしまったんですよね。

そこで三陽商会が新たに扱い始めたブランドがマッキントッシュだったんです。

さて、長くなったけどここからがタイミングの話です。

ライセンス物(日本製)マッキントッシュを初めてクリーニングした時、お客様とお話したのがこの樹脂の劣化とか加水分解の話でした。

「日本製になると、使われている材料も変わると思うから劣化がどのタイミングで出てくるかは4~5年後くらいにならないとわからないんです」

と話したのをよく覚えています。その4~5年後が今なんです。

ということで、品質表示を見ながら、ご説明です^^

マッキントッシュクリーニング~ボンディングの溶け出し事例と法律基準による金額算出方法~

このコートはボンディング加工という、生地と生地を張り合わせて作られている素材を使ったコートです。

左側の説明に「この製品は合成樹脂を使用し生地と生地を張り合わせた素材」、とちゃんと書かれています。

ボンディング、ゴム引き(樹脂コーティング)は簡単に言えば柔らかい接着剤を使い加工してある素材です。

「合成樹脂は(接着剤は)年月の経過とともに劣化し剥がれたりすることがあります」、とも書かれています。

使われている樹脂は必ず劣化するもので、法律で定められたクリーニング賠償基準でみると平均使用年数はボンディング加工、コーティングは2年、ゴム引きは3年とされている加工となります。

ボンディング、コーティングは軽くて暖かいって感じるコートやジャケットにはかなりの高確率で使われている加工方法です。

ダウン製品にも100%使われている加工で、何十万円とする高級ブランド品でも、この加工がされていると、平均使用年数は2年、これを基準に減価償却された金額を算出するのが法律基準となります。

マッキントッシュクリーニング~ボンディングの溶け出し事例と法律基準による金額算出方法~

こちらは2枚目かな。

「強い摩擦やもみ作用はお避け下さい」と書かrています。
何かこぼすとすぐに濡れたタオルなどで拭いたりしますよね。するとこの素材は色が抜け白けてしまうんです。
同じようにもんでもダメ・・・生地と生地をこすり合わせるとやっぱり色が抜け白くなります。

「折りたたんだ状態で保管しないで」と書かれています。
折り曲げた部分が簡単に白化(色抜け)し折った形に白い線ができてしまいます。
長年折り曲げた状態で置いておくと折れ曲がった部分のみ最初の画像の襟のように樹脂が溶けだしてきたりすることもあります。

「素材の特性をご理解の上ご愛用ください」
ちゃんと理解して買われている方どれくらいいるんだろ・・・
少なくても店頭でご説明すると高額品で長く愛用できると思って買われている方多いので・・・ほとんどの方がショックを受けています。


右を見ると素材の下に「ポリウレタン樹脂で張り合わせています」と記載されています。
この記載があるってことは、ちゃんと告知していますので良心的なブランドだなぁって思います。色んな服に加工されているけどマイナスイメージになるためかほとんど記載されていません。しっかり書かれているのは信頼できるブランドだなって。

不具合が出た時のためにすぐ問い合わせられるよう電話番号も明記されています。下のナンバーから、この服がいつどこで作られどこに卸されいくらで販売されたかなどわかるようになっています。

この品質表示は法律基準に則って付けられている服の保証書なのでとても大切なモノ。

でもこの大切な表示の意味をほとんどの方知らないんです。

マッキントッシュクリーニング~ボンディングの溶け出し事例と法律基準による金額算出方法~

こちらは3枚目かな・・・
撥水加工されている服全てに言えることですが、加工は使用中の擦れにより落ちていくし洗ったりしても落ちていきます。

表面加工だから必ず効果は低下していくってことが書かれています。

洗剤成分が残留すると撥水加工しても効果が低下するということも記されています。

家庭で洗うことはあまりないだろうけど、手洗いとか洗濯機のソフト洗いコースはすすぎが悪くなりがちで洗剤残りが良く出ると思います。

どんな服でも洗剤成分が残留していると撥水加工はものすごく効きが悪くなります。

「この製品のボタンは水牛の角を使用」と書かれています。
「クリーニングの際は取り外すかアルミで包み保護して」とも書かれています。

クリーニング店にもよると思いますが、業者が使う保護アルミは市販品のアルミより3~4倍程度厚いアルミを使用したりしています。

当店の場合だと、保護アルミを巻いても不安があるものはさらに保護クッションで包む、アルミにスポンジがついている専用保護アルミで包んで洗うなどしています。

それでも、壊れやすいボタン、例えば高級スーツに使われているボタンなどで、薄くおわん型になっている、宝石の原石から削り出して一式作られているボタンなどは、取り外して洗います。

削りだしボタンは一式数万円から10万円以上するものもあり、一つ壊れると全部取り換えとなりますから・・・

マッキントッシュクリーニング~ボンディングの溶け出し事例と法律基準による金額算出方法~

その他、画像を撮ってあったので参考までに・・・

こちらは袖口です。何となく黒光りしてみる部分は樹脂の溶けだしです。

溶けだしの説明しておきますね。

使われているウレタン樹脂は空気中の水分により加水分解という現象が起き溶け出すんです。

例えば壁に貼り付けてあるセロテープ。忘れた頃にはがすとペトペト糊残りしますよね。ガムテープなんかは糊残りすると腹が立つくらい取れない・・・

貼り付けるときは接着剤の役割をして手に付きませんが溶け出すとべとべとする、これが樹脂の溶けだしです。

糊残りしたセロテープ後はそのまま放置しておくと完全に乾きカサカサパリパリになり、爪でコリコリすると簡単にはがれてきます。

張り合わせた生地がはがれてくる現象です。張り合わせた真ん中部分のみがはがれると気法のような浮きが出てきます。

スーツなんかに良く起きている現象ですね。

内側に使われている樹脂が溶けだし液状化し、表に染み出てくると油シミのようになり、さらにほっておくと剥がれてくる、時間とともに進んでいく劣化です。

これは服を購入してからではなく一枚の生地として張り合わせたり加工された瞬間から劣化が始まっています。

安価になったからとバーゲン品とか買ってしまうとその年に溶けだしてきたりする可能性があるんです。

革のように見える人工皮革もポリウレタン樹脂が使われていると同じく劣化していきますし、長年愛用はできない素材となります。

マッキントッシュクリーニング~ボンディングの溶け出し事例と法律基準による金額算出方法~

こちらは前部分ですが、白っぽく見えているのは使用中の擦れによる白化です。

さっきした、品質表示の説明の中で、強い摩擦やもみ作用はダメ、ってありましたよね。

これは使用中の擦れ(摩擦)による色落ち。

素材の特性をご理解の上愛用してくださいともありましたね。

これが特性だから、理解して使ってね、ってことです。

マッキントッシュクリーニング~ボンディングの溶け出し事例と法律基準による金額算出方法~

こちらは裏側。同じ生地を張り合わせていると、わかりませんよね。

裏地が付けられていない、秋冬コートは表綿と裏面を確認してみる。

一枚の生地なのに裏と表の柄や色、織りが違っていたら張り合わせています。もしかすると2~3年程度でダメになる可能性があるってことです。

もちろん、10年くらい平気で使える服もありますが、それは今回のコート同様、10年後になってみないとわからない・・・

後は表示も確認する。ウレタン樹脂とかウレタンコーティング、ボンディングなどの記載があったら、長年愛用はできないなって思って購入したほうがいいかな。

でもこの加工が開発されたから冬場でも軽くて暖かく機能性の良い服を着ることができるんですよね。

昔の服って保温性を出そうと思うととにかく重たい・・・着にくい・・・

こうした加工も知って買うのと知らないで買うのとでは全く違います。

ある程度割り切って買い、おしゃれを楽しむのもいいですよね!

マッキントッシュクリーニング~ボンディングの溶け出し事例と法律基準による金額算出方法~

それでは最後に、このブログで何度も書いてきていますが、とても大切な品質表示の説明です。

当店へ初めてご来店のお客様だと、説明されたことも聞いたこともないって言われるのがこの表示。

とても大切なものでこれからも一生服は着ていくし新しく買うものだから、覚えておいてください。

この品質表示は法律基準に則ってクリーニングテストをして不具合が出ない洗い方を記すよう付けることを義務付けられている服の保証書となります。

指定通り洗って不具合が出た場合、法律上メーカーへ保証責任が発生します。
指定以外の洗いをして不具合が出た場合、洗った人の責任となり、自分で洗えば自己責任、クリーニング店ならクリーニング店に保証責任が発生します。

クリーニング事故が起きた場合、賠償基準に基づいて計算されます。

平均使用年数表はここをクリック!

保証割合表はここをクリック!

表の見方は調べたい服を平均使用年数で何年となっているか確認する。

今回のマッキントッシュコートの場合だと一番最初にあるところ。

分類が加工品、品目が特殊加工品という枠ですね。

品質表示画像2枚目に「ポリウレタン樹脂で貼り合わせ」と書かれていますからこれはボンディング加工製品なので素材はボンディング加工品、一番右の数字が平均使用年数で2年とされています。

この加工品は平均的に使用できる年数が2年、と定められているってことになり平均使用年数の2倍程度経過していると例えばクリーニング事故が起きたとしても法的な保証金額ってクリーニング代金が返却される程度となってしまいます。

保証割合表をで金額を算出していきます。
表が縦と横で見にくかったので分けていますが、見にくいかな(汗)

一番上が平均使用年数で確認した年数なので購入後に何年経ったかの割合を表から見ます。

例えばこのマッキントッシュのコートを5年前に購入したとなると 対応年数は2年(24ヶ月)の位置を縦に見て・・・使用年数は5年(60ヶ月)なので一番下の48ヶ月以上に該当します。

一番左を見ると保証割合(%)がA,B.Cの3段階で分けられていて、どこに該当するかで金額が計算されます。

一番下に保証割合の区分の適用方が書かれています。

傷や恒久的に取れないシミ、色あせや色抜けなどが一部でもでいるとCと評価されることがほとんどかな。

今回の場合だと樹脂が溶け出してシミが出ているし、色あせや色ハゲもかなり出ているから評価は良くてもCの購入価格の3%となります。
この状態だと保険で保証と言っても服としての価値は限りなくゼロ評価になると思います。もう使えない状態ってことです。

かなり高額なコートだけど、これが法律基準。クリーニング店がなぜこうした保証基準があること、適用されるときの計算方法などをお客様に告知していないのか不思議なんですけどね。

ドライクリーニングでは汗が落ちない、でもドライクリーニングしかしないのも、この法律基準があるからなんです。

メーカーが水洗いテストで不具合が確認され不可としているものを水洗いすると不具合が出てしまいます。
色が滲んだり、他のものに付いてしまったり、水を付けたところがそのままシミになってしまったり、変形してしまったり等・・・
メーカーとしては水洗いができるように服を作っていないってことになりますね。

ただし、本当に水洗いテストまでされているかどうかは・・・・わからない・・・
実際水洗いしても大丈夫な服はありますよね。

でも、家庭での洗濯は想定外の洗い方をされる方もいるので・・・不可としておかないと想定外の洗い方されても法的にメーカー責任となってしまうため、不可としている服もあったりします。

法律で責任所在を明確に分けているので、指定以外の洗い方はクリーニング店もできないんです。弁償保証等のリスクを背負ってまではやらない選択になってしまうんです。

シミや汚れを綺麗にする洗い方やシミ抜き方法を服の素材や状態に合わせて修復していくのがYou友の仕事です^^




 
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