プラダ(PRADA)のTシャツです。
まず最初に今回の記事は、「修復ができるよ!」という宣伝ではなく
前回に引き続き
【実際にやってみたら、お受けした時点での事前説明では想定し得なかった事がおこった】
という事例の紹介ですので、似たような事例を相談されたとしてもおそらくお受けできないと思います
何故お受け出来ないと言ってるような事例なのに紹介するのか? それには理由があり・・・
当店の場合、(今までにも何度もお話させて頂きましたが・・・)
【試すこともしてもらえない・・・でも諦めきれない!!】というお洋服のご相談がとても多いのです。
そして『弁償保証などのリスクを背負ってまではできない!!』という事も書かせて頂いてきましたが、
お客様が依頼品の仕上がり以上に不安に思い心配していることがあるのが伝わってくるんです。
それは何か・・・
それは、
「弁償しなくていいんだからダメになってもいいや・・・」という姿勢や気持ちで取り組まれているんじゃないか???
という不安ではないかと思うんです。
実際にはダメになってもいいなんていう気持ちで取り組んでいるモノなんて一点もありません!!
むしろ綺麗にできるモノよりうまくできない時って何十倍も手間を掛けてやっているんです!!
「この状態だと弁償保証は一切できない!!」ってそれだけ言われたら自分ならどう思うだろ・・・
「どんなに手間をかけてもダメな場合は代金取らない」なんて普通に考えたらありえないし、
その程度の手しかかけられないだろって思うんじゃないかな。
そんな心配をしているんだろうな・・・って感じるお客様には、どんな気持ちで取り組んでいるかをお話をさせてもらっています。
取り組む姿勢をお話することで
『全てお任せします

』
と、お客様は笑顔で依頼してくださいます。 ありがとうございます。
ダメになるかもしれない覚悟でお任せ頂けるお客様がいてくれる事が当店の技術をここまで育ててくれているんです!!
この服も車で1時間以上かかる遠方からご来店のお客様です。
普通Tシャツが水洗いできないなんて考えないし、高額ブランド品だから品質だって悪い訳はない!って思うんじゃないかな。
という事で、「ドライクリーニングでも洗えれば大丈夫」と思われている方、また、そう考えて販売しているお店もあります。
このブログで何度も言っている事ですが、この事例はとてもインパクトもあるので、もう一度・・・
購入前に必ず確認すべき事と、その大切さ、
自分の服を長く綺麗に愛用していくためのお手入れなど、修復画像も載せながらご紹介です。
この服に付けられている表示です。
一番左側の桶マークが水洗いマークですが×が付いています。
三角形のマークが×なので漂白できない、
四角に囲まれた〇のみは乾燥機マーク、×なので乾燥機不可、アイロンは低温、ドライクリーニングはOK。
憶えておいて欲しいのは、肌に直接着るタイプの服は水洗いできないと衛生さが維持できないし、体臭や汗など
臭いも取れないという事。
白い服はドライクリーニングだけだと必ず黄ばんでくるし、水洗いしないで熱乾燥させると早く黄ばんでしまうという事。
ただし、水洗いをしていても皮脂など落ち切れていない汚れが残っていると、熱乾燥で汚れの酸化が一気に進むため黄ばみます。
よくあるのが子供の体操服とか子供のTシャツ。まぁ、大人のTシャツでもソフト洗いとかおしゃれ着洗い洗剤で洗っていると黄ばみますが・・・
品質表示は(何度も書いていますが)服の保証書です。
洗い指定は法律基準に沿って、
メーカーがクリーニングテストをして通常使用では問題がない品質と、
洗い指定通りで洗えば不具合が出ない洗い方法が記されています。
だから、今回のTシャツの場合、水洗い不可となっているため水洗いしたお客様の自己責任という事になります。
クリーニング店でも洗い指定以外の洗い方をする場合、弁償など保証ができないとしているお店もかなり増えてきたと思います。
でも、水洗いできなければ白さも維持できないし汗も取れない・・・
色がくすんできても黄ばんできても白さを復元することもできないんです。
クリーニング店からすると、汗を付着させないように着ろって言われているのと同じなんです。
汗や皮脂など汚れが残っていると汚れにより酸化黄変する速度が上がるのですぐに黄ばんできます。
汚れの蓄積が多いと比例して黄ばむのも早くなり、熱を掛けると自然乾燥させるより温度が高く何十倍も速く濃く黄ばんでしまうんです。
クリーニングに出していても夏物衣料の脇や衿など黄ばんでしまうのも汗が付着した部分のみ酸化速度が速くなるためどこよりも早く黄ばんでいくって事なんですね。
さて、ここからが想定以上の・・・
染み抜きテストでをした時点で、色が移った部分は取れることがわかりました。
でも、黒い部分の色が水だけでも出てくる状態・・・これって雨に濡れたらこの状態になっていたなって事です。
部分的に色止めをしたところ、色止めが効くので色止めをしてから全体処理へ。
すると・・・色が止まらない・・・これはテスト時と実際の作業では水分量が違ったから起きる現象なんです。
要は、表面のみなら大丈夫でも浸透させてしまうと出る不具合。こういう事ってたくさんあるんです。
だから、家庭でもバケツを使って1~2分程度で一気に手早く手洗いするのと、何十分もかけて洗濯機の手洗いコースで回すのとでは全く別の洗い方になるんです。
実際に作業して見た結果・・・定着していない黒い部分の色を洗い流してしまわないと縫い目から色が滲み出てくる・・・
色止めは文字通り色を定着させるため、強く色止めすると滲み出てきた色まで止まってしまうためものすごく取れにくくなるんです。
白だから、わずかな色滲みでも見えてしまうんです。
結果・・・めっちゃ白けてしまった・・・
この部分の色はこの白けた状態までしか色が定着していなかったって事になります。
この辺りは作ったメーカー次第・・・見た目ではわかりませんから・・・
こうなっってしまったら・・・色入れをするしかない・・・(涙)
この色入れ、簡単そうに見えるかもしれませんが実際やるとすごく大変・・・
白に縫い付けられているから、ほんのちょっとでも付けば見えてしまいます。
で、同じような依頼は受けてくれるお店ってほとんどないはずです。
それはなぜかって、【お客様が水洗いしても色が移らない染色】をしなければいけないからです。
色って色を合わせる事より定着させることが一番難しいんです。
だからと言ってペンキを塗ればバリバリに固くなる・・・
バックやお財布でも補修に出したら塗った感がそのまま出ていたり、バリバリに固くなったって経験ある方多いんじゃないかな。
色は水洗いすると落ちてしまうモノなので、家庭で洗って着る服の場合、色落ちしないように染色することが一番難しいんです。
がさつきが出たり固くならないよう染色剤を作り入れて修復ですが、表側の見える部分のみです。
お客様が洗って色が出たら取ることはできないし、染料系のシミって落とすことができるクリーニング店ってとても少ないんです。
このTシャツはお客様がご自身で洗っても問題ないか実際に洗って確認テストしています。
そして、洗い方の注意点などお伝えしながら、お渡しです。
どこも断るような事例をやって行くと、説明できない想定外の事が起こります。
お客様からは説明効いてない、時間がかかりすぎってお叱りもお受けしますが(泣)
想定外の事が起きると修復にものすごい手間と時間がかかったりします。
他の仕事の兼ね合いもありなかなか手付けられない時もあります。
ここまでやる必要はあるのか?って思いながら依頼品と向かい合ったりしています。
だから当店は仕事内容を考えてお見積もりを出させて頂くだけです。
お見積もりと合わない場合はその場でお持ち帰りして頂くのは全然かまわないし、
一旦お持ち帰りいただいて、よく考えてから再度お持ちいただくのだってOKです。
仕事の質を落とし金額を下げてお受けすることは考えていません!!
当店にとってもお客様にとってもお互いが求める仕事が一致する事で、
とても良い仕事ができお客様にも喜んで頂けると思っているからです