羽毛の臭い取りです
今年は新品のジャケットやコートのご依頼がとても多く、
毎日メールやお電話で臭いのご相談もお受けしている状態です。
今回の画像は過去にご紹介させて頂いたコートなのですが、ここ数ヶ月は
この記事
ダウンの臭い取り~羽毛の消臭殺菌~へのアクセス数が
かなり増えていました
さて、みなさんが一番気になるのは金額と納期ですよね?
仕事内容と工程の詳細は長文後半で説明させて頂きます。
安く早く出来ない事をご理解頂けたらと思います。
ダウンの臭い取り~消臭殺菌~ 金額と納期
ノーブランドのショート丈ブルゾン 4500円位~
ブランド品 5600円位~
新品のままお預かりしている服も数多く、できる限り風合いの変化を出さないよう洗って行くため
洗いの1工程で5日~1週間程度 その後の乾燥工程(短時間タンブル~自然乾燥~短時間タンブル)を含め
早くても10日~2週間程度、洗い直しに入ると3週間~1ヶ月程度必要になります。
羽毛の臭い取りは製品にされる前段階で処理することを服に入れられた状態でやっていくため
かなりの手間と時間を掛けてやっています。
先日、ある大型店へ服を見に出かけたのですが、羽毛製品が並べられている
コーナーへ近づくと獣臭いような臭いが充満していました
仕切りのない大きな空間の中に置かれた物なのに、近づくだけで
臭うって事は購入して家に中に置いておいたら、たとえ一着でも
家中臭いが充満してしまうのでは・・・と思いました。
その臭いはここ最近毎日嗅いでいる臭いなのですが、そのコーナーを
離れないと気分が悪くなるくらい強烈な臭いでした
その時、このダウンコートのお客様から頂いたご相談時の言葉を思い出しました。
「出勤時、吹雪でとても寒かったので臭いのを承知で着ていきましたが、
地下鉄は満員なのに隣の席が空いていると言う悲しく恥ずかしい状況になりました(T_T)
今朝も非常に寒かったのですがさすがに着て行く勇気がなく・・・
私の新品のダウンコートは自宅で異臭を放っております」
羽毛が並べられているコーナーにも・・・お客さんは一人もいませんでした・・・
私は羽毛製品を含め服を見に行ったのですが(購入目的ではないのですが)その私でさえ
息を止めてそのコーナーの前を素通りしてきたのですから・・・
羽毛独特の臭いは羽根の羽軸に残っている残留物ラノリン(油分)が主な原因です。
残留物が多ければ臭いも強く残り、油分が腐れば臭いも出てきます。
だからと言って油分を全部抜き取ってしまうと羽根は広がらなくなるだけではなく、
羽自体が傷んでしまうと羽毛に油分を補給しても羽根は広がらなくなり最終的には
粉砕して粉状になってしまう事も・・・
羽毛製品も昔と比べかなり安価で購入できるようになって来ましたが、臭いの問題は
金額に比例して多くなっているのでは?と思っています。
安価な服でもほぼ無臭の物もありますし、高額ブランド品でも臭いが強い物もあります。
購入金額ではなく羽毛がどんな基準で処理されているかにより臭いの度合いが変わってくるんです。
詳しい過去記事
ダウンの臭い取り でご紹介していますのでご覧下さい。
実際に何軒も服を見に行って購入額の安さ、臭いの強い物等を見て嗅いで・・・
臭いに困っている方はものすごく多いんだろうなぁ、と思いましたが・・・
安価で購入された羽毛製品だと、臭い取りの処理をすると購入金額を超えてしまう物もありました。
それでは、
安価でできない工程と納期、そして臭いが残ってしまう服の説明を
させて頂きたいと思います。
(一点ずつ羽毛に消臭殺菌剤をしっかり浸透させるために空気を抜いている画像です)
服として製品化されているものは羽毛だけではなく使われている生地と生地にされている加工なども考え、
風合いも損なわないよう考えて洗っていかなければいけません。
臭い取りの場合、
臭いの原因となっている油分を取り除くと言う作業をやっていかなくては取れないため、
ドライクリーニングをした後、水洗いによる消臭殺菌をしながら表生地、裏地、そして羽毛の羽根に付いている臭いを
取っていき、最後にドライクリーニングで取った油分を羽毛の羽軸に入れ(ふっくら加工)仕上げていきます。
臭いが強く2度の工程で取れない場合、もう一度洗い直しながら工程を繰り返していきます。
新品も多いため羽毛をなるべく傷めない様、使われている生地を縮めたり退色などが出ないよう洗い後は
羽毛をほぐすための短時間タンブルをし、その後自然乾燥させ(乾くまでに4~5日干す)最後に
羽毛を膨らめるよう再び短時間タンブルにて乾燥をさせます。
ここまでの工程をしていくと最低でも10日~2週間程度、洗い直しに入ると3週間~1ヶ月程度かかってしまいます。
通常のクリーニングとは違うためすぐに着たい羽毛製品ですが数日では仕上げる事ができません。
当店ではダウン以外でも高額品を扱う事が多く、
1点手作業、タンブラー乾燥をできる限り避けて
自然乾燥させるという方法でやっていきます。
羽毛製品でも2~3日で仕上げてくれるお店もありますが当店では
品質を重視しての洗い~乾燥、
仕上げ加工とやっていくため通常クリーニングでも1週間~10日程度かかります。