マッキントッシュコートクリーニング参考価格(2021年2月現在・税抜き)
ゴム引きコート 7000円~
全体色上げ(色素回復)仕上げの場合 +5000円
※染め直しとは違いクリーニングすると加工剤は落ちてしまいます。
クリーニング+全体補色(染色) 25000円~
ゴム引き素材はエルメス。ヴィトンにも使われていますが、スコットランド製のゴム引きとは加工素材が異なります。
日本でライセンス取得して作られているゴム引きも使われている加工素材が異なります。
おしゃれ工房You友(ゆうゆう) 大友 眞吾です。
マッキントッシュといえばゴム引き素材が有名だけどクリーニングに出すのが怖いって言われる素材の一つじゃないかな。
今回のお客様は初めてご来店くださったお客様ですが、当店の前にクリーニング店へ持っていったところ、ゴム引きのコートを知らなかったらしく・・・
ゴム引きコートですと言っても綿素材ですよね?っと・・・で、不安になり持ち帰ったとのことでした。
ゴム引き素材といえばマッキントッシュの代名詞ってくらい有名ですが、他にもスコットランド製、日本製、ヴィトン、エルメスなど色んなブランドがゴム引き素材を使っていますが、ゴム引き素材を使っている場合、エルメス、マッキントッシュなど2つのロゴが書かれています。
同じゴム引きという素材でもゴム引き加工(樹脂加工)の材料が異なるようで、出てくる不具合も色々な状態のコートを見ています。
あるブランドは裏面にプリントされているメーカーロゴが溶け出し、表面にロゴの形がそのまま染み出しているってコートも見ていますし、購入して3年程度で硬化して固くなりバリバリで着られなくなったってコートも見ています。
スコットランド製のマッキントッシュを一番多く洗ってきていますが、見たこともない変化が出ている高額ブランドコートもたくさん見ています。
ゴム引きという加工の特性といえば特性なのですが・・・このゴム引き加工は日本の法律で定められている賠償基準で見ると平均使用年数は3年とされている加工になります。
賠償基準表はこちら
加工品と書かれている枠の上から3番目、ゴムコーティング品がゴム引きコートに該当します。
今回はスコットランド製の本家ゴム引きコートですが、衿の黒ずみと白い汚れを落としたい、というご相談。
5年位は愛用されているとのことでしたが、まだ一度もクリーニングしたことがないとのこと。
実はこのゴム引きコートって洗った事がない方も多いんです。
日本製のマッキントッシュコートも作られるようになってから5~6年経ち、不具合が出るとしたらそろそろかな、って考えていたこともありますが・・・
悩まれることは皆さん同じですので、詳しくご説明するために画像もメッチャたくさん撮りながら洗っていきました。
クリーニングに依頼する際の注意点、説明しておかなければクレームになるであろう、クリーニング後の状態、色あげしながらの仕上げなど・・・
クリーニング店からなんの説明もなく不具合が出てしまったこと、疑問に思われていることなど参考になることがたくさんあるかと思います。
今、新しいHPを作成しており、詳しい説明のリンク先としても使いたいと思っていますので、かなり詳しく書く超大作になるんじゃないかな(汗)
マッキントッシュのゴム引きコートをお持ちの方は続きからどうぞ^^
まずは洗い指定表示から。スコットランドの洗い指定では左から手洗いは可能で、漂白、アイロン仕上げ、ドライクリーニングは不可となっています。日本語表示は全て不可・・・
洗い指定の違いは、その国の洗濯の文化が違うし水質も違うからですね。
例えば同じ水洗いでも水質が硬水の国で洗えば問題無く洗えても、日本の軟水という水質で洗うと色が滲んだり、褪せたり、色移りしたりなど出てしまうことがあるんです。
日本の軟水という水質は世界でも珍しい、洗濯に合った汚れ落ちの良い水質だから、外国語表記で水洗いができるとされていても不具合が出る可能性があるんです。
それともう一つ、この表示は法律基準に則ってテストをして付けられている保証書になっています。指定通り洗って不具合が出た場合はメーカーで保証しなければいけないという法律があるんです。
輸入品の場合は輸入元が日本の法律基準に則ったテストをして日本語表記の洗いして表示が付けられるため、保証書となるのは日本語表記の方となります。
以前、有名ブランドの服の不具合が出た際、日本で輸入し日本語表記が付けられている服は保証対象となりましたが、全く同じ服でも小さなお店が個人輸入した服や現地で買った服は日本語表示が付けられていなかったため保証されませんでした。
それぞれの国の基準があるのですが、ゴム引きも含め加工されている服の加工って使う国の気候に合わせて作られるため、作られた国では問題が出なくても、気候の違う国に持っていくと加工が溶け出したり、硬化してばりばりになったりなど不具合が出てくるものもあります。
例えば、壁や机にセロテープやガムテープ貼っておいて、時間が経った頃は剥がすと糊残りしてベトベトします。
これはテープに使われている接着剤(樹脂)が空気中の水分により溶け出した状態(加水分解)ですが、これと同じ現象が加工された服にそのままで起こるんです。
洗わずに皮脂を残しておくと、皮脂はアブラのため水より樹脂を溶かしやすく、1~2年程度で溶け出してくるものもあります。特にダウン製品は全てに樹脂加工がされているので少しでも長く愛用するためには汚れを落としておくことが大切。
使用中のスレや汚れによりゴム樹脂が加水分解で溶け出した事例
そのまま完全に乾燥するまで放置しおくとパリパリになり、爪でコリコリするとポロポロ剥がれてきます。この現象も貼りっぱなしになっているセロテープで見かけますね。
合成皮革という見た感じが革のように見える素材、通風性を遮断するよう生地の織りを埋めるように樹脂(接着剤)を入れるコーティング、生地を裏側に貼り付けて軽くて暖かく機能性の良い服を作るためのボンディング加工など・・・
合成皮革付きのダウンコート・合成皮革の劣化による剥がれ事例
これらはすべて樹脂加工製品。ユニクロの評判が良い安価で機能性がよく暖かい服はよくこれらの加工がされているので、ダウン製品でもトレーナーやパンツにしても3年程度で寿命が来ますと書かれていたりしますね。
これらは経時劣化と言って使っていてもいなくても、置いておくだけでも劣化が進み寿命がやってきます。
これがゴム引きコートの劣化、寿命となるんですが、使用状況や汚れ具合、保管状態により寿命は変わってきます。
ゴム引きコートの場合、生地を縫い合わせておらず、接着テープで貼り付けて服を作っています。
5年もすると少しずつ剥がれてくる部分も出てくるため、よく確認すると上画像のように剥がれている箇所があったりします。
これも樹脂の寿命です。確認もせずなんの説明もなく洗ってしまうと一気に剥がれコートがバラバラになることもあります。
もう一度張り合わせるか、剥がれてこないよう縫い合わせるかの2択になりますが、先に説明していないと弁償しろ!・・・の3択目が出てきてしまいますね・・・
当店では確実に剥がれる場合はお受けできないこともあります。剥がれた場合は直していきますが実費がかかります。
ここまでがメンテナンスするときの注意点。
売る側からもクリーニングする側からも詳しい説明がほぼ無いと思うので参考にしてください。
ここからはクリーニング&メンテナンスです。
ブランドロゴ入りボタンは注意が必要です。
割れると同じものの入手は困難だし、ロゴが入っているとロゴに入れられている塗料が取れてしまうこともあります。
とはいえボタンはある程度は消耗品です。
着ている時に硬い角部分にあたってヒビが入っていたり、ボタンの飾りが取れかかっていたりすることがあります。
ボタンを巻いているアルミは専用の保護アルミで通常の3倍程度の厚みと粘度があります。保護アルミを巻いて、更に保護ホックを付けできるだけ負荷がかからないように洗っていきます。
ボタンのロゴは仕上がり画像見ていただくとどうなっているかわかります。
このコートの場合、ボタンをはめたとき、表側から見えないよう隠しボタンになっています。
このタイプは色の濃いコートの場合、必ずといっていいほど丸くボタンの跡が表側に出てしまいます。
固いボタンにより生地の表面にスレが起きてしまうため白く見えるのですが、たとえ色を入れて染色しても完全には直すことができません。
目立たなくできる程度ですが、どのくらい目立たなくなるかは仕上がり画像でご確認ください。
衿は皮脂により黒く、スレにより白っぽくなっています。
全体はソフトに、テープが剥がれないように洗っていくため、汚れている箇所はすべてしみ抜きで落としていきます。
直接肌に当たり擦れる部分は必ず皮脂が付くため、ソフトな洗いしかできない服は全品こうしてしみ抜きしてから洗っていきます。
全体は水洗いになりますができる限り色落ちなど抑えて洗うようソフトな洗い方をしています。
勘違いされている方も多いようなので一言説明しておくと、クリーニング店の高いコースで依頼してもきれいにならなかったって話を時々お聞きしますが、ソフトに洗うって事はその分汚れ落ちも悪くなります。
衿や袖口の汚れすら落ちてこないって言うのも、ただソフト洗いしただけではまず落ちない汚れです。
当店ではソフト洗いでも綺麗に洗い上がるよう、衿や袖口は全てしみ抜きを掛けています。
洗い方は、全体にかなり汚れが染み込む状態で付着している場合、それほどでもない場合など色々ですので、その服の状態にあった洗い方を選択していきます。
今回は画像にはないけど染み込んだ汚れがかなりあったので、もうひと手間掛けて汚れを落とす洗いをしています。
そして洗い上がりです。
色落ち具合は見ての通り・・・悪化しています(汗)
これは想定内でお客様にきちんとご説明しています。
お客様に白い汚れと言われていた部分は着用中のスレによる色落ちでしたし、肘の内側の部分はハンドバックを手に掛けたり、折り曲がったりするためこちらも色落ちしています。
染料が繊維から取れてしまっても、洗っていなければまだそこに残っている状態なので色は濃く見えますが、洗うと汚れと一緒にすでに取れている色は洗い流れてしまうんです。
だから、お受けする前のご説明は、洗って汚れを落とすと色も一緒に洗い流れるので色落ちしてもっと白けると思います。
という説明をし、洗った後に染め直していくか、色上げしながら仕上げるのかをご相談。
今回は今年着たいというご希望があること、染め直しは今シーズン使い終わってからでもできることなどから、色上げで仕上げていくということでお受けしました。
色上げとは染色された色素が残っている場合、その色素を濃く浮き立たせるような加工仕上げです。
元々は和服のスレを目立たなくする方法だったと思いますが、服にも応用ができます。
洗うと落ちてしまうため衿のみなど部分的な色上げは今までもやっているのですが、全体となるとけっこう大変・・・ということで新しくメニュー化した仕上げになります。
半分だけ色上げ仕上げした状態。
こうしてみると色が濃くなったのがわかりますね。
水洗い後、濡れている状態で全体的には色上げ加工で仕上げているので、洗い上がり後の画像は普通に洗ったときと比べるとすでに色が少し濃くはなっているんです。
でも、仕上げしながらスチームで加工剤を入れ込むことでもう一段色濃く仕上げることができます。
ボタン保護しているときには見えなかったロゴ入りボタン。
ロゴが刻印されいて、刻印に白い塗料が入れられています。この塗料が洗うことで取れてしまう事があるんですね。
たとえしっかり保護していても完全密閉にはできないため洗剤や溶剤が入り込み洗い流れてしまうことがあります。
実際、ロゴ修復して直したボタン、あります(汗)次は洗い流れないよう、しっかりと固着させて入れていきましたが・・・
今はご説明して、絶対に取れないように洗う場合は一度全てのボタンを取り外し、洗った後に取り付けます。
これ以外に方法がありませんから・・・
あと、before画像の右上のボタン跡にも注目!
お客様も気になっていた白い汚れと言われた部分。
色上げ前は更に悪化して白くはなっていますが、色上げして白化した感じはかなり目立たなくができました。
ボタン跡もかなり目立たなくなっています。最後から2枚めにもう一度出てきます。
全体仕上がり画像です。
パッと見は白化した部分とか全体的に褪せてきたって感じがあまり見えない程度まで色が回復しています。
ただし、全体的に色濃くはなっていても、色の抜け方が激しい部分と色抜けがあまりなかった部分とでは差があります。
衿の白く色が抜けていた部分は目立たなくはなったにしても、まだ白く見えています。
どうしてこの部分の色が抜けているのかはわかりませんが・・・
その他の白く見えていた部分もかなり回復して目立たなくなっていることがわかると思います。
お客様ご自身が一番気にしていた部分です。
洗い後の画像がなかったので仕上がり画像のみですが、汚れも落ちそれほど色落ちも目立たずとても喜んで頂けました^^
樹脂の溶け出しが出ていなくてよかった・・・
こちらが白い汚れと言われていた部分。ボタン位置を見ていただくとかなり目立たなくなっているのがわかると思います。
このボタン跡を消してほしいってご相談、実はかなり多いんですが・・・これは完全に直す事ができないんです。
たとえ染色しても見る角度により白くボタン跡の輪が見えてしまうんです。代金を頂いて直すってレベルにはできないものが多いので・・・
この部分の修復のみはお受けしていません。
クリーニングにご依頼して頂ければ、色上げをして仕上げていますが、ご依頼時にお伝え下さい。
画像では写すことができないのですが、汚れと色以外にもう一つ大きく改善していることがあるんです。
それは、風合い。
ゴム引きコートってある程度年数が経つとごわつきが出てきたり硬い風合いになったりします。
元々しっかりした生地ですが、しなやかさが戻ってきます。触るだけでも質感の改善はわかると思います。
ゴム樹脂が溶け、固まりかたくなる、汚れも同時に蓄積していくためごわつきが出てきますがこれも改善することができます。
マッキントッシュコートのご相談はとても多くいつかどこかで丁寧な説明を書かなければ、と思っていました。
三陽商会がライセンス取得して作られている日本製のマッキントッシュもゴム引きコートはそろそろって思っていたこともあり、詳しく書いてみました。
新しいHP作成時には説明用としても使いたいと思っています^^
数日に渡り書きましたので・・・大変でしたぁ・・・後日説明用として手直しします。